演奏会本番
熱演をありがとう.さぁ,今度は自分達で!!

May. 17 1999

いろいろあったこの半年も,この日で終わり. 思いは人それぞれあるでしょうが, あと2回通したらこのメンバーでブラ2を演奏することは一生ありません. 今回,演奏会前日から会う人にはそう言ってきました. 今回の演奏会のステージにのるのと全く同じ面子で, しかも同じ指揮者で, 全く同じ演奏をすることはもう2度とないのです. だから, いまできる最高の演奏をして欲しい. 素晴らしい演奏会にして欲しい. いまのみんなにはそれができる. 当日の朝からずっとそう願い続けていました.
そして迎えたリハーサル. いつもは練習の一番最初の演奏がどうもふぬけになりがちだったので, 練習が始まる前に何人かの人に激励に行きました. それが功を奏したのか, なかなかいい演奏をしてくれました. これはいけるぞ!! そう実感したのはこのときです (G.P. のときから少し感じてはいましたが). 本番もこれとまったく同じように演奏してくれれば, かなりいい演奏になるだろう, 久々の名演になるかもしれないという予感がありました. 結果は… 名演というよりは,むしろ熱演でしたね. でも,かなりいい演奏だったと思います. これに関しては, ブラームスのリハーサル直後に熱田先生が 「本番は全然違うから」 とおっしゃっていたときにうすうす勘づいていました. あぁ,きっとこうなるんだなって. しかも,奏者の側も4楽章はとばすと公言していた人がいたようですし, こうなる運命にあったのだと理解しています. 結果は演奏後の拍手がすべてを物語っています. お客さんを喜ばせることができたのでよかったと思っていますが, あのテンポで演奏するには技量が足りていなかったのも事実です. この辺り,今後の課題として技量アップに励んで欲しいところです.

さて,それぞれの曲についての感想です. 私はブラームスのトレーナーだったので, あまり客観的には判断できませんが, 演奏を聴いて思ったことをちょっと書きます.

ワーグナー.
冒頭,Vn だけのアンサンブルは結構奇麗だったと思います. ただ,最後の方の練習で指摘されていたように, 付点のリズムの演奏の仕方にもう少し配慮があるとよかったと思います. 場面によって,次へつなげるべく少しふくらませ気味にしたり, おさめるようにしたりできたらさらに雰囲気が出たかと思います. これは,管楽器(特に木管)でも同じです. 木管は弦よりも表情がなくて, 物足りなく感じました. 32分音符が聞こえないというのはちょっと残念でしたね. あれが聞こえないと意味がない. あと,一番盛り上がるところで音に広がりが感じられませんでした. これは今後の課題としてもらえるとうれしいです.

モーツァルト.
少数精鋭だけあって,アンサンブルは非常によかったと思います. ちょっとバランスが悪かったかな. 特に,Vn が刻みになったり,速いパッセージを弾くときには どうしても音量が小さくなってしまいます. そういうときにも低弦がゴウゴウと鳴ってしまっているために, 何を聴かせたいのかよくわからなくなってしまう部分がありました. これは,Vn のさらい不足,あるいは意識の統一がはかられていないということと, コンサートホールが響きすぎることが原因かなと思います. あと,これは永遠の課題なのかもしれませんが, いまいちモーツァルトらしさが感じられませんでした. モーツァルトらしさって何? って訊かれると私も何と言っていいのかわからなくなってしまうのですが, なんというか,いまいち面白みに欠ける演奏でした. 整然としすぎていたのだろうか? もう少し無邪気な感じというか, 遊び心があってもよかったかな. うーん,何か違うなぁ… よくわからないです.^^; ある意味非常に高度な問題ですので, 今後モーツァルトをやるたびに考えて欲しいと思います. ほんのちょっと気になったのは, 私が見える範囲のお客さんに寝ている人が多かったこと. 雰囲気として,ちょっとシラケムードがただよっていたのは何故でしょう? どうしても気になったので,何度も周りを見渡してしまいましたが, みなさん背もたれに寄りかかって聴いていました. 最後に,ブラームスにも共通するのですが, 4楽章は速すぎたと思います. 先生の意向というのもあったとはおもいますが, あれだと「カール君に挑戦!」みたいな感じで, 『だから何????』『何を伝えたいの?』と疑問を覚えてしまいました. ここらへん,ブラームスだと曲に表情がつけやすいのでまだいいのですが, モーツァルトの場合は機械のような演奏になってしまいがちですから, よく注意した方がいいですね. まぁ,こうやって書くといろいろあるのですが, あくまでも今後の課題としてとらえてもらえればいいです. 演奏のレベル自体は結構高かったと思いますので, 安心してくださいね.

ブラームス.
自分が半年間トレーニングをしてきた曲だけに, いろいろ思い出しながら聴いていました. 皆さんは演奏を楽しむことができましたか? 私は,これまでは管トレだったのが今回は異例の弦トレで, しかもいろいろと苦労しましたから, 途中涙が出そうになるのを必死に抑えながら聴いていました(ほんとですよ!!). 曲の冒頭はばっちりでしたね. 山中君,杉山君をはじめとする Vc, Cb のみなさん,すばらしかったです. 私が出演したときのブラ2と比べると, 全体的にはかなりまとまりのあるいい演奏であったと言えます. ブラームスに出演したすべての人に拍手を送りたいです.
1楽章は,練習番号Eで16分音符が聞こえなくてちょっと残念でしたが, さすがによく練習しただけあって安定していました. つかみはO.K.でした. 2楽章,練習番号B(?)に入る前のアンサンブルがあやしかったのと, それと同じパターンで, 後半 Va, Vc が弾く付点のリズムが聞こえなかったのが残念でしたが, 全体的な感じは非常によかったと思います. 特に,Vc はよかったですね. 上を目指せばきりがないのですが, 本当によくやったと思います. 3楽章.少し速めのテンポでいくので不安を感じていましたが, やはり Prest 冒頭は崩れてしまいましたね.(;_;) そのまま行っちゃえ! という人と, 安全運転で行こうという人にわかれてしまったようです. それでも,3/8拍子の冒頭は今までで一番いいのでは? と思わせるくらいよくできていました. 4楽章.最初から速いテンポで始まったので, そのまま行ってくれと願っていたのですが, 練習番号Aから怒涛の突進が始まってしまってほんの少し残念でした. でも,みんなのっていたのでこれもありかな. テンポが速かったせいで, いくつか細かいところでせっかく練習したのにできなかったところが あったのは,やはりもったいないですね. もう少し遅いテンポだったらはっきり聞こえたかもしれないのに…とか, アンサンブルがちゃんとできたのに…というところが結構ありました. 一番最後などは,ほんとにそんなに加速して大丈夫なの? って心配してしまう程でした.^^; それでも, 最後の和音が鳴り終わったあとの, あの割れんばかりの拍手が示すように, 聴いているものに訴える力は十分にある演奏でした. こういう演奏を求めていたんですよ.
実際,モーツァルトではあんな状態でいた人がブラームスはどういう態度で 聴くのだろうと思って時々周りを見渡していましたが, ほとんど眠る人がいないばかりか, みんな結構身を乗り出すようにして(ちょっと大げさ?) ステージを見ているのには驚きました. それだけ,ひきつけられる演奏だったということでしょう. 奏者から伝わってくる「気」というんですか, 音楽をしようという心もしっかりと感じられたし, ホール全体の雰囲気が全然違ったので, なかなか興味深かったです.
これだけのことができるのであれば, やはり惜しまれるのは, もう少し細かい部分をきちんとさらってもらえれば, きっと歴代に名を残す名演になっただろうに… という点ですね. ただし,これについてはあくまで個人のレベルアップなくしては 実現できない問題ですので(この点については大音さんも指摘されていますね), もっと鍛錬を重ねて欲しいと思います. やっぱり,「基本が重要です」から.

ここまでの演奏をすることができたのは, 技術委員長,コンマスをはじめとするトップのみなさんの努力, そしてなにより,奏者個人の努力によるものです. 素晴らしい指揮者に巡り合えたことも幸運でしたね. 是非,この感動を忘れずに次につなげて欲しいものです. 幸い,次の第九は4楽章がブラ2と同じ D-dur ですから, 基本がしっかりできている人はすんなりとさらえて, さらに上を目指すことができるはずです.

半年間,いろいろあったものの私のトレーニングにつきあってくれて 本当に感謝しています. ありがとう. そして,迷惑をかけてしまった人たちにはこの場を借りて謝罪しておきます. どうもすみませんでした. 私自身はとにかくいい演奏会を開くためにはどうすればよいかということを 真面目に考えてここまでやってきました. その素直な気持ちを理解して頂けたら幸いです.

さて,これからは皆さん自身で演奏会をつくっていくことになります. まずは,今回の演奏会でよかったこと,悪かったこと, できたこと,できなかったことを的確に把握することからはじめてください. それを踏まえて,次回演奏会の練習が始まるまでにやらなければならないこと, 次回演奏会に求めるものをはっきりさせて欲しいと思います. 技術的な課題は, 私からあげてもいいのだけれど, この演奏会の練習中にもいくつかあげていますので, それを参考にして自分達で考えてみてください.
私からみなさんへのお願いは, 最終的な目標は「音楽を創る」ことであり, どんなときでも表現することを忘れないでほしいということです. そして,どのレベルでも同じことがいえる鉄則として, 『基本が大事』 『最初が肝心』 『終わり良ければすべて良し』 をあげておきます. 一つの音,一つの旋律にはじまって, 一つの楽章,一つの曲,一つの演奏会, さらにはオケ生活まで, どれをとってもこの鉄則はあてはまります. 是非このことを頭の片隅にでもおいて今後の練習に取り組んで頂きたいと思います.
名大オケが今後さらに発展していくことを心から願っています.

完.
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